-東俳の大きな特徴でもある「人間を育てる」という点について。
現場に行ったら、人間対人間。いくら芸事にすぐれていても、人としてしっかりしていなければ、やっていけません。自分の法律でしか生きていけない人は、芸能界では生きていけません。だからこそ、大人と向き合える、自分で考えて行動できる自主性が大切です。
現在、以前より増して強まっている傾向として、こどもが、ペット型もしくは王様型になっています。ペット型は、親に完全に支配されてしまっている。なにをするにも、親の顔色を見てからしか行動できない。親がうなずけば、自分もうなずく。そして、王様型は、自分の思い通りにならないと、ゴネる。しかし、これではいけません。社会性をもって、立ち向かうチカラを身につけてほしいと思います。
私は、こどもたちが劇団に入ってきたときに、3つのことを伝えています。ひとつめが、素直なこころをもつこと。ふたつめが、勇気を持とう、一歩前へ踏み出そう、ということ。そして最後が、根気を持とうということです。「失敗しなさい。どんどん失敗しなさい。そこから学ぶべきことはたくさんある。だいじょうぶ。」と言い聞かせています。
こどもをいきなり変えることは難しい。だからこそ、親が先。親を変えることで、こどもを変えていきます。さきほども言ったように、いま、こどもが操り人形になってしまっています。親を変えていかなければ、何も変わりません。
いま、待てない親がふえています。自分も仕事をしている。朝、こどもが支度をしていても、早く早くと待てない。こどもがじぶんで用意できるまで待てないので、結局、親が全部やってしまう。これでは、こどもが育ちません。
だから、私は学校の先生と相談しなさいと言っています。何事も自分でやらせているので、ミスがあるかもしれませんが、ぜひあたたかく見守ってほしいということを。こういうことからも、まずは、実行です。親自身が行動に移していくことが大切なのです。
私は、毎月4回、母親セミナーを実施しています。そこでは、私はキレイゴトは一切言いません。だから、なかなか理解されないこともあります。なぜ、こんなこと言われないといけないんですか?と。でも、私は、待ちます。親自身が自分で考えて、こちらに来てくれるまで待ちます。だから、最初は、反発してもいい。恨んでもいい。考えることが大切だと思っています。そして、アドバイスを求めに来てくれたときには、大いに受け入れます。そして、どんどんアドバイスをしていきます。
私が言っていることは40余年一貫して同じです。心が大事だということ。どんなにいいブランドものを着ていても、心が美しくなければ、ぜんぜん素敵に見えないと。せっかくキレイな顔してるのに、そんなしかめっ面していては、きれいには、見えないと。時間はかかります。でも、親も、だんだん理解していきます。そして、次第にやさしい顔になっていくのです。
-これから入団を考えている親御さんたちへ。
人見知り、自己中心的、こういったものは、演劇で治ります。そういうものを治せる要素が、お芝居のなかにはあります。そして、社会に出せる、他人を受け入れられる人間にすることができます。
劇団東俳は、親も子も人間として成長していける場所です。また、保護者でつくるつくしんぼの会・さくらんぼの会というものもあります。
そこでは、親同士、グチも言えます。どこへ行っても、なにを話すかひとつひとつ気を使う窮屈な今の世の中で、ここなら何も気を使わず話す事ができます。そういう場所があるのとないのでは、ぜんぜんちがいますから。
▼朝日新聞(夕刊) 2010年1月30日掲載










